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まだまだ肌寒い野営地の夜。
暖をとるためと説得して、フランシスは腕の中に彼女を閉じ込めた。
熾火がはぜる音が時折聞こえる以外は
風もなく、静かな夜だった。
フランシスは毛布をより一層きつく巻き
彼女との隙間を失くそうとする。
彼女のぬくもりを少しでも強く感じようとする。
しかし彼女はその行動に声をあげた。
「フランシス、あの、確かに暖かいのですが
少し、距離が近すぎるような…」
彼女の声に合わせてふわふわの髪が鼻先で揺れる。
フランシスの胸に、2つの対立した思いが湧き上がる。
彼女の側にいられる言いようのない幸福感と
彼女を失うかもしれないという身を切るような恐れ。
しかし、どちらの感情にしろ
俺はこの女が好きなのだ。
今までに感じたことが無いほど、狂おしいくらい好きだ。
反応のないフランシスをどう思ったのか
彼女は視線を彼に向けようとした。
それを押しとどめるかの様に、
フランシスは彼女を抱く腕に力を込め、
首筋に顔を埋めた。
「フランシス…?」
「…なぁ、もう、二人で逃げちまおうか」
このままどこか遠くへ。
二人が笑っていつまでもいつまでも一緒にいられる場所へ。
好きだ、好きなんだよ。失いたくないんだ。
フランシスは取り乱しそうになるのを抑えて
彼女の言葉を待った。
フランシスからは見えなかったが
彼女は大きな目を少し見開いて驚きを表し、
それからふわりといつもの様に笑みを浮かべた。
そしてフランシスの頭に手をまわし、髪を撫でた。
「…もう、どうしたんですか。
また馬鹿なことを言って。
あなたは我が国。
あなたがいなくなってしまったら、
私はどこを心の拠り所としたら良いのですか」
違う、違うんだ。
分かってる、そんなことは不可能だと。誰も幸せになれないと。
でも、君を失うのも怖い。
どうして俺をこんな気持ちにさせたんだ。
どうして俺は国なんだ。
どうして俺は君のためだけを考えてはいけないんだ。
しかし彼は、その全ての言葉を飲み込み、
顔を上げ、笑った。
「…だよなー」
その言葉に彼女は彼の頭から手を除け、毛布の中へ戻す。
「そうですよ。疲れてしまいましたか?」
そして二人で声をたてて笑う。
フランシスはもう一度、不安や悲しみを押し殺して笑顔を浮かべた。
「ジャンヌ」
「はい?」
彼女が身をよじり、彼の方を向く。
二人の視線が交わる。
「好きだよ」
彼女は今度は驚きを見せず、深く笑った。
「私もです、フランシス」
その好きに大きな隔たりがあると
二人とも気付いていた。
「あの時、無理にでも連れ去っていたら
なにか、変わっていた…?」
墓石は何も語らない。
フランシスはあの夜と同じように悲しみを押し殺して笑顔を浮かべる。
「好きだよ、ジャンヌ」
この気持ちもあの日のまま。
今までにないほど狂おしく、君を愛している。
end.
フランシスの好き→一緒に幸せになりたい
あのこの好き→フランシスに幸せになってほしい
その違いです。
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